墓じまいの手順(墓じまいで最初にすべきこと)【事例紹介①】長野県60代女性のケース

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お墓を解体して更地にする「墓じまい」。近年、様々な事情により、お墓の承継が難しくなって「墓じまい」を選択する人が増えています。

そこで、この記事では、実際の事例を元にどのように墓じまいを進めるべきかについて解説したいと思います。

今回のご相談者

今回のご相談者は、長野県在住の60代女性。本人は一人っ子。旦那様を亡くし、子供は神奈川県に在住(帰郷するつもりはない)。

【今回の相談内容】突然の訪れた「墓じまい」

本人のおじい様にあたる代からお付き合いのあるお寺(A寺)があり、そのA寺にお墓はある。しかし、お父様の代になって引っ越したため(同一県内の引越し)、法事仏事については街中にあるお寺(B寺)へ依頼するようになっていた。そのため、本人の代では、お墓のあるA寺とは疎遠な状態。

そんな中、旦那様を亡くされた本人は葬儀をB寺にて営む。そして、納骨をするために何十年ぶりかにA寺を訪れる。が、そこで突然、住職から二者択一を迫られる。

管理をしていく都合上、a)檀家としての活動に参加するか、b)これを機に墓じまいをして更地に戻すか。

あまりに急の事だったため、本人はどうしたらよいのか分からず、葬儀社、石屋、B寺などと相談を開始する。

本人が、葬儀社との相談を通して気づいたこと

葬儀社の担当者とは、本人は旦那様の葬儀を執り行った関係で話しやすい環境にあった。そこで上記の悩みを打ち明けるが、葬儀社はあくまで儀礼を行う専門職。解決には至らない。

本人が、石屋との相談を通して気づいたこと

墓石を建立してもらった石屋に相談するも、石屋もまた、石材に関する専門職。墓じまいの現場に関する話は、もっと後。まずは墓じまいまでの道筋を立てる必要性を実感する。

本人が、B寺との相談を通して気づいたこと

B寺とは父の代からの付き合いがあるため、トータル的な相談をすると、「お寺の墓地には空きがあるので、そこに移設したらどうか?」と提案される。しかし、自分の代で家は終わるので、墓地移設という大きなことはしたくない。また、費用面もある。合祀、もしくは永代供養という形が自分には合っているのだと気づく。

当協会のアドバイス

私たちは、終活に関する専門家集団ですが、あくまで中立的な立場にてご相談を承っております。そして、その立場で言えば、まずご本人が自ら情報収集や各関係者に相談したことは正解だと思います。

墓じまいという言葉の中には、お寺、法律、義理、お金などの事が複雑に絡み合っているので、まずは「自分で段取りを組める状態を作る」ことを最初の目標にするべきです。そして、段取りを組むには、兎にも角にも情報です。情報を集めることで、自分のスタイルや居住地域にあった選択肢が見えだします。

近年はインターネットの普及により、沢山の情報が閲覧可能です。一つ一つでは解決に至らない情報も、それらが集まることで大きな情報になることも多々あります。是非、まずは情報集めをご自分で行ってください。

さて、今回の相談では、ポイントが2つあります。一つが、「自分の代で家は終わる」こと。2つ目が、「お金をかけたくない」ということ。そこで、私たちが導き出したアドバイスは「A寺にて墓じまいの後、公営の合祀墓」です。

しかし、それを遂行するには、解決すべき事柄が二つあります。お寺との関係と、費用面の話です。

アドバイス①「意向を固める」

今回の相談者本人は、A寺でもB寺でもなく、公営の墓地が希望です。そのため、お寺(特にB寺)との関係が悪化するのではないか?また、自分の葬儀の時はどうするべきか?との悩みが生まれます。

これらについては、きちんとその旨をお寺と話し合うことが大切です。何も遠慮する必要はありません。

「この度、このような事情があり、市営の墓地で合祀していただく事が最良と考えております。また、自身の祭事に関してはこれからもよろしくお願いしたいと思い、その旨を息子にも伝えております」

など、自分や家族の意向を持ってお話をする。これがとても重要です。

お寺はお寺で、昨今の寺離れや人口減少などから、檀家離れは深刻な問題です。お寺を運営、存続させていくことも命題であるため、当然お寺側からの意向も受ける事になるかと思われます。ですから、意向なしで交渉を行えば、当然お寺側の事情のみを聞かされる事となります

自分たちの意向とお寺の意向を擦り合わせながら方向を導くのが交渉です。情報を集め、意向を持ち、交渉する。この順番が非常に重要です。そして、情弱にならない。これもまた、本当に大事な事ですね。

今回は交渉の結果、自身の死を以って離団とする旨、それまでは通常通りに檀家としてのお付き合いをしていく旨。自身の葬儀に関しては遠方の息子さんによってB寺で行う旨などを決め、自身の意向通り、市営霊園へ合祀する事となりました。そして、この段階でようやく、墓じまいの段取りが組める形となります。

石屋さんはこの後から決めていけばいいと思います。

アドバイス②「コストを知る」

コストを考えれば、今回のケースには2つの選択肢があります。

選択肢①B寺の墓地に移設した場合
A寺での魂抜き、解体費用、B寺での墓地永代使用料、墓石建立費用(既存石塔使用不可)、魂入れ

選択肢②市営霊園での合祀にした場合
A寺での魂抜き、解体費用、市営霊園での合祀料

単純に選択肢②では墓石建立費用分は丸々浮きます。あとはお寺が設定する永代使用料と市営での合祀料の比較となります。(細かな所ですと、ご遺骨が何体あるか?によって変わってくる部分もあります。)

安くやってくれる石屋さん探しは、方向性が決まってからで構いません。それよりも、意向、段取りの部分でコストは大きく変わります。

まとめ

墓じまいの段取り★情報収集→意向を決める→交渉(寺)→石屋探し→実行

一人一人、一家一家に事情が違い、ケースバイケースではありますが、一概にやり出す時の情報収集段階が一番不安で、何から手をつけようか?と困ってしまうものです。ですが、意向が決まってしまえば後は段取りを組むだけなので、さほど難しい事はありません。

墓じまいは段取りを組むまでが悩ましい所です。

墓じまいだから、墓屋・石屋だけに相談すればいい、というわけでもありません。墓じまいは総合的に道筋を立てる必要があります。

もし墓じまいをご検討中なら、是非この事例をぜひ参考にしてください。